世田谷区代田 K さんの場合

CASE5 トラブル満載物件

不動産買取会社に売ってよかった!

パートナーの司法書士から、現地で孤独死した物件の処分について相談を受けました。

その物件は、疎遠となっていた相続人Kさんの弟さんが住んでいた二階建て長屋でした。

一階には、弟さんが居住し、二階は賃借人に貸していたものの、病気が原因で突然亡くなってしまい、数日経過したところ、ポストに新聞が溜まり、警察が臨場して発見された事件でした。

Kさんは、死後数日経って発見された状況と男の一人暮らしの住宅が衛生的では無かったので、その住宅を売却することにしました。

その住宅を売却するには次のような様々な手続きと費用負担が必要なのですが、Kさんにとっては手続きが大変煩わしく、弊社が通常の手続きをすべて請け負うことを条件として取得させて頂きました。

今回のケースで手続きと費用負担とは

  1. 亡くなった弟さんの現地供養・・・約 10 万円
  2. 家財残置物の撤去・・・・・・・・・約 150 万円
  3. 建物の解体・・・・・・・・・・・・・・・約 250 万円
  4. 土地の測量及び隣地所有者との境界確定書の取り交わし・・・・約 80 万円
  5. 前面私道の通行掘削に関する承諾書の取得・・・・・・・・・・・・・・約 50 万円

上記の手続きについては、特に大きな問題がなく進むこともありますが、問題が生じる可能性も秘めており、その不確定な状況を煩わしいと考える方は、通常の売却価格より安くても、不動産業者に売却してしまうことがあります。

Kさんのその判断は正しく、次々とトラブルが発生し、逆に弊社が大変苦労した事例をご紹介いたします。

弊社スタッフ立会いのもと
弊社スタッフ立会いのもと、現地供養をいたします。

(1)亡くなった弟さんの現地供養は粛々と進み、近隣住民の方も安心して頂きました。殺人や自殺ではないので、 大きな問題ではありませんが、隣の家の内で亡くなったという事実は、若干のわだかまりを持つ方もいらっしゃ るので、このようなケースの場合、弊社では現地供養を行っております。

発見された「薬莢」
発見された「薬莢」

(2)家財残置物の撤去時に出てきたもの

「ダントラストさん、これは処分できません。」と撤去業者さんに言われたのが、「薬莢」です。
火薬と実弾は入っていませんでしたが、警察に届ける義務が生じます。警察に連絡したところ、警察が臨場し、現場検証となりましたが、事件性無し。ということで当日のうちに終了しました。

当時の現場検証の様子
当時の現場検証の様子

(3)‐1 建物解体時にアスベスト建材発見

建物解体を開始したところ、アスベスト含有吹付け建材が発見されました。

現在は使用されていませんが、古い建物については、注意が必要で、発見された時は法律に従った処分を行うため、解体費用が上乗せされます。建築時等の情報(建物の図面など)が無い場合は、目視での確認や吹付けアスベストが規制された年代と建築年次、使用されている用途などにより類推する方法があります。吹付けアスベストの施工時期の目安は次の通りです。

(あ)吹付け石綿:昭和50年まで

(い)石綿含有吹付けロックウール:昭和55年まで(湿式工法は昭和63年まで)

(う)その他の石綿含有吹付け材:昭和63年まで

多くの解体ガラが地中に埋められていました
多くの解体ガラが地中に埋められていました

(3)‐2 地中埋設物が発見

建物の解体が終わったところ、地中から以前の解体ガラが、発見されました。過去に建っていた建物を解体した時に、適切に処分せず、地中に埋めてしまっていることがあります。

当然、適正ではないのですが、このような地中障害物が発見された場合は、売主の責任で撤去する(費用負担する)義務が生じます。今回は、そのような責任が生じない条件で弊社が取得したので、Kさんには責任が生じませんでした。

緑の線と赤い線が本来は一緒でなければならない
緑の線と赤い線が本来は一緒でなければならない

(4)(5)隣地所有者と境界確定時の大きな問題

通常の生活しているなかで、自分の土地の境界がどのようになっているかなどは、気にしないと思います。ところが、一般の方が考えている以上に境界のトラブルは起こっています。

特に、道路との境界線については、狭い道路(狭あい道路)の道幅を拡幅させる「セットバック」。取り扱いが各道路によって異なる、私道(位置指定道路)などの境界はトラブルに繋がり易いです。

狭あい道路の幅員を拡幅させるために、各々の土地を道路として提供するのですが、提供する面積によっては、納得しない方が居ます。また、公平な提供であれば良いのですが、道路の形状によっては提供面積が変わるので、トラブルに発展する事があります。

今回は、前面道路が、「位置指定道路」という私道であったのですが、その道路境界線と所有権の堺が異なっており、スキマがある状況でした。また、現況の敷地境界線(側溝との境)も、道路境界線と異なっていました。

このスキマがあると、敷地と道路が接していないことになり、建物を建てることができなくなります。いわゆる無接道地で、土地の価値は大きく減少することになります。

現地で関わる住人に説明している様子
現地で関わる住人に説明している様子

位置指定道路とは、行政が認めた一般人が所有する私道ですから、行政が認めた位置を簡単に変えることはできません。(すでに、道路に接して建物が建っていますので、その前提条件が変わるので、影響が無いように建物や工作物を撤去する必要が生じます。)

そのような中で、適正な位置に道路を変更するためには、位置指定道路を利用する7世帯12人の合意が必要で、全員から実印の捺印と印鑑証明の提出が必要となりました。

今回のようなケースは、稀にあるものの、測量を行った土地家屋調査士ですら経験が無い事例でした。

結果的に、数か月を掛けて住民に説明を行い、全住民で合意した位置に変更することを、行政に認めてもらいました。

多くの住民で合意するにしても、中心となる者は一般の方では荷が重すぎます。土地家屋調査士であっても、地権者では無いので、行政に働きかける限界もあります。不動産の専門家が、地権者(固定資産税を支払っている所有者)として、行政に何度も通い、特例的に認めて頂いた事例でした。